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【エスノグラフィーとはなにか】その意味や書き方をわかりやすく解説

エスノグラフィーとは

ethnography

エスノグラフィー(行動観察調査)とは、定性調査の一種であり、顧客の生活環境に調査員が身を置いて顧客と行動を共にすることで、顧客のことを深く知る調査手法を表しています。エスノグラフィーはギリシア語のethnos(民族)、graphein(記述)に由来し、もともとは文化人類学民族学の分野で主に用いられてきた研究手法でした。調査対象となる民族の文化を解き明かすことを目的として、その土地の風習、行動様式などを詳細に記録することを表しています。

そのエスノグラフィーは、近年では新たな課題を発見する手段として、マーケティングをはじめ、人材育成やマネジメントなど、ビジネスの分野にも取り入れられるようになりました。インタビューやアンケートでは顧客の顕在化したニーズについて直接伺うことができますが、エスノグラフィーでは被験者の日常の行動や何気ない言動を観察する中で、潜在ニーズを探り、意思決定に至るまでの過程を把握することを目的として行われます。

 

エスノグラフィーを実施する流れ

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次に、エスノグラフィーを実施する流れです。

1. 調査設計

まずは調査の目的に沿って、どのような調査対象者を抽出したいか、どのような生活状況に寄り添うか、そして得た情報をどう活用するかなど、調査の設計を行います。何を明らかにすべきか仮説を立てて臨むケースと仮説がない状態から受け入れるケースの両方があります。

2. 調査対象者の募集と選定

調査の対象者を選定します。通常のマーケティング調査では、一般的な方を対象として行われますが、[/ エスノグラフィーではヘビーユーザーやアンチユーザーなど、極端な思考を持つユーザーに対して行われる場合もあります。]そのようなユーザーの深層心理からヒントを得て、多数派の一般の方々をより強く動かすものは何なのかを探れる期待が持てるためです。

 

誰にインタビューするか

どんな人に話を訊きたいか、を客観的に定義しましょう。
スマホの操作に慣れていない人」では主観的な定義になってしまう。実施者の判断で対象者が異なってしまうことがあります。

 

◎ノンユーザー(Non-user)

「競合他社の製品を利用しており、自社製品を利用していない人」&「自社製品も競合他社の製品のどちらも利用していない人」
自社のサービス・製品を使っていないユーザーに話を訊くことによって、彼らはどのように目的を達成しているのか(発見)、どうしたら自社のサービス・製品を使ってもらえるようになるか(改善)のヒントが得られる可能性があります。

 

◎類推ユーザー

例えば接客業なら、接客繋がりでコンシェルジュ、アパレル販売員、カーディーラー、美容師などに話を訊くとヒントが得られる可能性がある。

 

3. 調査の実施

調査対象者のご自宅など、私生活の環境に調査員が赴き、行動の観察を行います。写真や動画の撮影をしたり、適宜インタビューをおこないます。
エスノグラフィーによって明らかにできる項目としては、以下が挙げられます。

・消費者の潜在的なニーズにつなげられる根拠
・ターゲットとなる消費者の価値観、ライフスタイル
・製品・サービスが利用される環境とそこにある課題・困難
・製品・サービスが利用されている最中やその前後に行われる消費者の行動 など

4. 調査結果の認識合わせ

観察した際の映像記録を見せながら、現場で見聞きした情報を調査員から関係者へ共有します。仮説と照らし合わせながらディスカッションを重ね、結論へと導きます。

 

5. 調査結果の集計・レポーティング

分析した定性的な調査結果を、報告書として取りまとめます。エスノグラフィーの結果は新製品のアイディアになったり、コンセプトの策定に活用できたり、ターゲットとなるペルソナ像を明らかにしたりと、さまざまなマーケティング活動へと役立てられます。

 

エスノグラフィーを行う3つのメリット

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続いて、エスノグラフィーを実施するメリットを3つご紹介します。

メリット1|リアリティある情報に多く出会える

たとえば洗濯用洗剤や掃除機、洗濯機などは、日常的に消費者の自宅で使用され、消費者の生活と密接に関わり合う製品です。実際の現場でどのような利用のされ方をしているか、企業のきれいな会議室で考えていても、なかなかリアリティを持って理解することはできません。エスノグラフィーの大きなメリットとしては、実際に消費者の生活や自宅の環境を目で見て、製品の課題や強みを確認できる点にあるといえます。

メリット2|潜在ニーズや新しい仮説を発見できる

エスノグラフィーのメリットとして、固定観念に捉われず、新しい視点で潜在ニーズや仮説を発見できることも挙げられます。たとえば食料品ブランドのヘインズのトマトケチャップはいかがだろうか。

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これは調査員が消費者の自宅を訪れて観察した際、入れ物を逆さまにして底を叩きながらケチャップを取り出しているということがわかり、「予め逆さまになっているケチャップのボトル」という潜在的なニーズの発見に至ったといわれています。

さらに、ケチャップの残りが少なくなってきた消費者は、逆さにして冷蔵庫で保管していたのです。中身が満タンのケチャップを眺めているだけでは得られなかった発見といえるでしょう。

メリット3|消費行動に至る背景を理解できる

商品・サービスの評価は売上という数値に表れます。しかし、売上が良かったとしても悪かったとしても、なぜ購買に至ったのか・至らなかったのかといった背景は、顧客の心理を調査する側が読み取って想像しなければなりません。エスノグラフィーを行えば、その製品を消費者がどのように利用しているのか、なぜ利用しているのかを、消費者の行動や置かれている環境から、より具体的に想像して理解することができます。